リビング障子ができるまで
 
❶ 原木の天然乾燥
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 原木(丸太)から製材したばかりの木には多くの水分が含まれています。実際に製品として使われるまでには屋外で半年から一年、その後室内で同期間ゆっくりと寝かせて乾燥します(天然乾燥)。
 吉原で主に扱う材料は、外材・国産材含め約十種類の樹種をメインとし、等級もそれぞれ作る製品によって使い分けています。 
 障子や組子製品には、素直で加工しやすい針葉樹が材として適しており、化粧材のなかでも特に吟味した良質の銘木材が求められます。木を細く挽き割って使うため、木本来の癖、反り捻れが出やすいためです。 
※主な建具材;杉、ヒノキ、スプルス、米ヒバ、タモ、パイン、地松、など。

 
❷ 木取り・加工(きどり・かこう)
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 一枚板の木目を見て、どの部分を何処に使うかを判断し、必要な大きさに材料を取ることを木取りといいます。
 木は新建材と違い、色合いや年輪の細かさ、その表情は一本一本違います。製材によって「柾目(まさめ)」と「板目(いため)」の木目があり、材の使い方を間違えると製品の美しさを損なうばかりか、将来的に反り曲がりの原因にも成り兼ねません。
 また、木には「アテ」とよばれる年輪の一部が太く、色濃くなった部分が見られることがあります。これは風や雪など育った環境により生まれる木の癖を表しています。アテは通常のそれよりも固く、曲がりやすい性質をもっているため化粧材には適しません。節(ふし)などに比べて一見見分けがつきにくいアテ目を瞬時に見抜くには、熟練の経験による眼力が必要です。これらのことから、製品を作るうえで木取りは最も重要な工程のひとつで、最も木を熟知した職人でなければ正しい木取りはできません。 
 荒木の木取り材は捻れや通りを見ながら、手押しカンナとよばれる木工機械を使ってまっすぐに直角に削っていきます。最後に必要な厚みに落として表面を加工します。

 
❸ 勝手墨・墨付け(かってずみ・すみつけ)
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 一見同じように見えても木には上下・表裏があり、建具職人はこれらを見極める目を養うことから始まります。代々先人からの教えとして、「立ち木をイメージして作る」ことが建具を作るうえで全ての基本であり、この考え方は製品としても大変理にかなっています。木目や木口からさまざまな情報をキャッチし、メインとなる部屋になるべく良材が見えるよう材の勝手を決めて印しをつけること。これを勝手墨といいます。
 また、障子にかぎらず建築建具はその現場、箇所によって寸法が全て異なります。
 吉原で制作する家具・建具は全て、それぞれの現場のサイズに合わせて作ることから、製品ごとに正確な割り付け・墨出しが必要になります。 
 墨付けにおいて一般的に家具は鉛筆を使いますが、ホゾ・小穴などの細工を要する建具の墨付けには、白書き(しらがき)、スコヤ、コンパスといった専用道具を使います。

 
❹ 組子の挽き割り(ひきわり)
 建具用語で一般的に、正面から見たときの見掛かり面を「見付(みつけ)」、奥行き面を「見込(みこみ)」といいます。 
 極めて繊細な桟が幾重にも重なり合い模様を描く組子細工は、コンマ数ミリの誤差でさえ命とりになってしまいます。そのため、見付・見込それぞれ厚みの仕上げには細心の注意を払わなければなりません。細く挽き割った組子は最後に一本一本カンナをかけて正確な厚みに揃えます。
 削っては挽き割り、また削って厚みを決める…。隙間なく美しく、そして手早く組み付けするには、単純な作業のなかにも「職人の勘」とも言うべき細やかな心遣いと技術が込められています。
 欄間や書院障子の組子は通常見付3.0ミリを基本厚とし、細工の細かさや模様によって1.8、2.1、2.4、2.7、3.0、3.3…という具合に厚みを使い分けます。僅か0.3㍉の線の厚さの違いでも、それは組子の生命とも言えるほど重要であり、全体の仕上がりや美しさにつながります。
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※「リビング障子」は、組子の伝統模様を今の暮らしに合ったスタイルにデザイン開発された、リビング用の組子障子です。 従来の欄間に比べ模様を大柄でダイナミックに組み上げることで、リビングや広空間にこれまでにないスケール感で斬新かつモダンな陰影が生まれます。 組子を厚く、また「三つ組手」といった特殊な細工を施すことで、ハードユーズにも対応した強度・生産性・コスト面も大幅に改善されました。
 
❺ 組手切り(くできり)
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 組子が交差する部分の溝加工のことを組手(くで)と言います。一般的な障子は竪横の桟が90度に交わるシンプルな組手の仕口になっていますが、複雑な模様になると「三つ組手(みつくで)」とよばれる特殊な細工で組み上げられています。
 三つ組手は三方から60度交わる正三角形で構成される組子で、高級な組子欄間(らんま)にのみ見られる特殊な細工として知られています。組手切り加工には職人の高度な技術と手間を要しますが、抜群の強度と耐久性、そして様々なパターンの模様を組み描くことが出来るのが三つ組手の技法の最大の特徴と言えます。

 
❻ 地組み(ぢぐみ)
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 どんなに艶やかな組子細工も、まずは作りたい寸法の基礎となる組子面を作ることから始まります。これを地組みといいます。
 難しい模様になるほど極めて正確さが求められるため、コンパスや角度定規などの道具を使って割り付けします。ものによっては実際の原寸をベニヤ等にひいてから制作に取りかかります。 
 正確なピッチと角度の組手・ホゾ加工など、必要な細工は予め全て施しておきます。組み付けには外れ防止のため接着剤(木工ボンド)をつけて、一挙に手早く組んでいきます。 

 
❼ 葉入れ(はいれ)
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 三つ組手をあしらった地組みの正三角形の隙間に、「葉(は)」または「葉っぱ」と言われ小さな木片をはめ込むことで、複雑な模様を作ります。 
 正確な葉を作り出すための治具、角度カンナ、毛引きなどさまざまな専用道具があり、長さや角度をひとつひとつ調節しながら葉を取っていきます。 時に数千個もの葉、部材で構成される意匠性の高い組子もあり、屏風や行灯、小物には特に細やかな細工で模様を描きます。
 麻の葉(あさのは)・桜(さくら)・胡麻(ごま)など、模様によって道具や細工の仕口もさまざまで、組子パターンはその組み合わせにより百種以上にものぼると言われます。
 専用の打ちあてでトントンとリズミカルな音をたてながら、一マスずつ丁寧に組み付けていきます。

 
❽ 付子(つけこ)
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 障子の縁とする框(かまち)の内側に沿って、付子(つけこ)とよばれる細い桟を回します。 付子には、紙の貼りしろ、框と二重枠という意匠性、強度といった役割があり、書院障子や欄間(らんま)などの高価な組子建具には必ずといっていいほど付子が付きます。
 一般的な障子には付子が回っていないものも多く、その場合は框に直接のりをつけて紙を貼ります。

 
❾ ペーパー仕上げ
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 小さな木片をはめ込んでいく組子細工は、組み付けの際に表面に僅かな凹凸が出てしまいます。サンドペーパーを使ってこれらを磨き落とすことで表面を均一に、フラットに仕上げます。接着剤のはみ出し等もきれいに取り除くことができます。

 
❿ 框組み(かまちぐみ)
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 障子やドアなど建具の縁をそれぞれ竪框(たてかまち)、上桟(かみざん)、下桟(しもざん)といい、これらを総称して框(かまち)といいます。
 建具を框組みする際、絶対に気を付けなければならないのが、胴付き(隙)・カネテ(角)・捻れ (捻)です。それらを全て確認しながら組み立て、最後に表面に出た凹凸をカンナで仕上げて完成します。 
 敷居・鴨井(しきい・かもい)の溝をスライドさせて開閉する引き戸は、上下に戸首(とくび)と言われる欠き込みをつけますが、近年は便利な建築金具も多く開発されています。吊戸、折戸、ドア錠といった専用金物による取り付け・加工方法もさまざまです。
 現場の設計に合わせて建具を取り付けることも、建具職人の大切な仕事です。


(リビング障子ができるまで 全10工程)

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