一本の木から生まれる

「新築中の障子をつくってほしい」最初のご一報はある日のお電話からでした。
当初は一窓だけのご依頼でしたが打ち合わせのなかで、和室廻りの障子をすべてつくらせて欲しい、と誠に無理勝手なお願いしたのは僕。でもこれには意味があるのです。
本当に拘った建具というのは寄せ集めの材料ではなく、一本の丸太からつくります。自然物である木はどんな一流の銘木でも一本一本、色や木目その表情は異なります。
ひとつの空間を一本木でつくることで、価値のある落ち着いた空間に仕上がるのです。もちろん大径木が必要になりますが、Hさまのご新築に相応しい材料で仕上げさせていただきました。
二間続きの雪見障子、組子欄間、書院障子、リビング障子。本格和室ならではの重厚な建具を最高の材で手掛けるという職人冥利に尽きる案件でした。